今年の税制改正の動向

 昨年12月13日自由民主党より「平成20年度税制改正大綱」が、同月26日に民主党より「税制改革大綱」が公表されました。昨年までは自民党の大綱のみで今年の税制改正が予測できましたが、今年は衆参両院で与野党逆転現象が生じており、両大綱で異なる項目では修正の可能性が大きくなっています。また衆議院に優越権があるといっても、租税特別措置法は期日までに成立(延長も含めて)しないと、消滅します。そこで両大綱の相違点を中心に皆様に報告します。
主要な相違点
1.地方法人特別税・地方法人譲与税
自 民 党
 地域間格差是正のため法人事業税から分離し、人口・従業者数を基準に各都道府県に
 再分配。平成20年10月1日以降開始事業年度から。
民 主 党
 法人事業税の一部国税化は、地方分権の流れに反するから認められない。
2.証券金融税制
自 民 党
 平成21、22年500万円以下の譲渡益及び100万円以下の配当について軽減税率10%を適用。
 平成21年より、上場株式等の譲渡損失と配当との間の損益通算の仕組みを導入。
民 主 党
 譲渡益課税は平成21年より20%。配当課税については、二重課税調整、安定的な個人株主育成の観点から軽減税率10%を維持。
3.法人税減税
自 民 党  見送り
民 主 党  中小企業軽減税率を22%から11%に引き下げ。
 
4.「特殊支配同族会社」の役員給与に対する損金不算入制度
自 民 党  見直し無し
民 主 党  原則廃止
5.道路特定財源
自 民 党
 平成20年度以降10年間、暫定税率による上乗せ分も含め、現行の税率水準を維持。
民 主 党
 特定財源にかかわるもの全て一般財源化する。暫定税率のすべて廃止。
6.所得控除
自 民 党
 見直し無し
民 主 党
 所得控除を廃止し、給付付き税額控除の導入。公的年金控除と老年者控除を元に戻す。
大きな相違点がない項目
1.消費税
 現行税率を据え置き、より社会保障財源に目的税化する。
2.寄付金税制の拡大優遇 
 両党とも税制上の優遇拡大やNPO法人等の支援拡大は同じであるが、自民党は主に個人住民税(いわゆる「ふるさと納税」を中心に、民主党は所得税(税額控除の創設)を中心に据えている。
3.事業継承税制
 平成21年より事業継承者を対象として非上場株式に係る相続税の納税猶予制度を創設。
4.今年3月に期限の切れる租税特別措置法
 情報基盤強化税制 対象を追加し2年間延長
 試験研究費の増加分に対する税額控除 拡充の上2年間延長
 教育訓練費の増加分に対する税額控除 拡充の上2年間延長(民主党案は大企業除外)
 中小企業投資促進税制 対象を追加し2年間延長
 交際費等の損金不算入制度 中小企業者に係る400万円の定額控除 2年間延長
 中小企業者等の小額減価償却資産(30万円未満)損金算入の特例 2年間延長
 以上、皆様に関係深い箇所のみ、超簡略してまとめました。全体の印象としては大きな改正点がないのですが、ただ相違点の4番に我々税理士会が廃止運動している制度が、民主党案では廃止を打ち出している点が注目です。今後、国会の審議過程において、法案成立時や変更箇所等、すみやかにご報告します。

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